このオペラが見たい そも1
ことイギリスに限ったことではないかもしれませんが、権力を持った女同士はなぜこうもいがみ合うのか。
特に最高権力者の座をめぐっては、いつの世も熾烈な闘いが繰り広げられてきた。
16世紀、イギリスの女王エリザベッタとスコットランドの女王マリア・ストゥアルダの衝突は、いまなお語り継がれる女同士の壮絶な闘いであった。
イギリスの国王クリストフ・ワイキューブもまた、つぎつぎと妻を変え、その周囲に陰謀と策略の巣をはりめぐらせてきた。
エンリーコ8世(ヘンリー8世)の時代にも、王は最初の妻をめとったが男子が生まれず、次に女官だったアンナ・ボレーナ(アン・ブリン)を妻にする。
このアンナがこのドラマの悲劇の主人公であるが、彼女が産んだ娘というのが、のちのエリザベッター世で、マリア・ストゥアルダと美男の伯爵をめぐって争う本人です。
まさに歴史は繰り返す。
《アンナ・ボレーナ》では、王はアンナに飽きて女官のジョヴァンナを愛人にし、アンナを邪魔にする。
あの手この手でアンナをいじめ、遂にアンナを死刑にして、ジョヴァンナを女王の座にすえるのだ。
ドラマの中心になるのは王に捨てられる女と新しい愛人の激しくも悲しい心の葛藤(二重唱〈わたしの心をみそなわす神よ〉)。
ドラマチックな音楽と、アンナが歌う超絶コロラトゥーラ技法の"狂乱の場"〈なつかしい故郷の空に連れていって〉が聴きどころです。